私がコピーライターに憧れていた頃だから、昭和55年ぐらいのことだ。
糸井重里の著書で「コピー塾」みたいな本での、「ナンパ」をお題にしたコーナーがあった。
ナンパをテーマにしたコピーで、その回の最優秀作品は「そこらで馬場の話でも」であった。
何んとも味わいのあるコピーだなぁ、と思った。わびさびの世界、とさえ言える。
当時、如何にジャイアント馬場の存在が、メジャーでもあり、ユーモラスでもあり、奥深い存在として捉えられていたと想像できる。
そして馬場は、プロレスそのものにおいても、極めて奥深いというか・・・。
セメントは嫌いだが、セメントにも強い。受け身が巧く相手を強く見せるが、我も強い。
複雑なようでもあり、分かりやすいようでもある。それもプロレス的と感じてしまう。
改めて記すが、私は猪木派だ。昭和44年12月の猪木VSドリー・ファンク・ジュニアから、ずっと猪木派だ。
しかし外人レスラーの引き抜き合戦あたりから、プロレス誌などで内幕というか、政治的な話も載るようになる。
さらには馬場のバラエティー番組出演やCM出演で、少しずつ馬場の印象も変わっていった。
運動神経の良さなどは、巨人に入れたぐらいだから、嫌というほど語り尽くされている。
やっぱり馬場の特長の一番は、プロレスラーとしてのセンスの良さかなぁ、と思う。
馬場はアメリカ武者修行時代で、すでに売れっ子レスラーだった。
馬場は日本人レスラーとして、当時の定番だった田吾作スタイルを踏襲していない。
しかし、ヒールだったことに違いは無い。ただ、スケールが大きいから、田吾作スタイルは必要なかったと思われる。
もちろんスケールが大きいからといって、一流のヒールにはなれない。
馬場は自分の体の大きさを利用したパフォーマンスが出来、チョップやキックを巧くヒールらしく使った。
キラー・カール・コックスへの耳そぎチョップなど、日本での試合なのにヒールそのものだった。
だからブルーノ・サンマルチノとのベビーフェイス同士の試合でも、馬場のヒールテイストのスタイルが、この試合を成立させたのかもしれない。
チョップは大きく振り下ろし、キックは高く足を上げ、馬場は体の大きさを目立たせる動きが巧かった。
攻められる時も体の大きさを生かした、派手なやられっぷりだった。さらに、やられる時の表情も良かった。
馬場とフリッツ・フォン・エリックの試合など、チョップとストマッククローの場面が延々と続くわけだが、手に汗握る大熱戦となった。馬場だからこその大熱戦、と思う。
ヒールが試合を引っ張るわけだから、良いヒールは良いベビーフェイスにもなれる。
それが、ジャイアント馬場なのだ。
初来日の時のミル・マスカラスに対しては、徹底的にヒールを演じた馬場。本当にマスカラスが嫌いなのかと思うぐらい、意地悪な馬場だった。
勘繰るに「お前は迷わず、日本でもベビーフェイスで行け!」という、馬場からマスカラスへのメッセージだったのかもしれない。
その後のマスカラスの全日本プロレスでの活躍を考えると、あながち間違っていないような気がする。
~~~~~~~~~
馬場も猪木も結局は経営者なのだが、馬場VS猪木が実現していたら、勝負はどうなっていただろうか。
経営者だからとか、TV局がどうだとか、一切無視しての夢物語として・・・。
馬場はあの体で、力道山の下でセメントは徹底的にやらされている。
馬場は先にアメリカに行っているので、馬場のいない道場では猪木が一番強かったらしいが、馬場はアメリカでもフレッド・アトキンスにセメントで鍛えられている。
そしてあの体、まず卍固めは掛けにくいだろう。バックドロップでギリギリ。延髄切りは微妙だ。
逆に馬場は、猪木に掛けにくい技は無い。ドリー・ファンク・ジュニアやジャック・ブリスコなど、猪木と同タイプのレスラーとは何度も対戦している。
ジャンピング・ネックブリーカードロップも、32文ロケット砲も16文キックも、どんどん繰り出せる。
対して猪木は、アンドレ・ザ・ジャイアントと何度も対戦している。
アンドレをギブアップさせたような、腕固めみたいな手があるな。
フリッツ・フォン・エリックからも、腕ひしぎ逆十字固めに近い技でギブアップを奪っている。
本当に、何のしがらみもなく試合をしたら、やっぱり勝ちたいという気持ちは猪木の方が強かったような気がする。
・・・だからと言って、猪木が有利とはならない。
だって馬場は、猪木VSビル・ロビンソンの翌年に全日本に招聘して、ロビンソンから2フォールを奪ったり、あのワールドリーグ戦の猪木初優勝の時の決勝の相手となったクリス・マルコフに、2-0という情け容赦のない試合もしている。
この辺りは馬場の我の強さと意地の悪さが、思いっ切り出ている。
ところで当時、私の父親は、巨人の長嶋茂雄と対談した馬場が長嶋の年棒を聞き、「僕はその5倍だよ」と答えたという話を何度も私にしていた。
そのソースは明らかではないし、長嶋の年棒がプロ野球界では破格だったこともあって、小学生だった私はその話を信じなかった。
しかし馬場のアメリカ遠征時代の円のレートを考えると、今思えば、父の話も外れではなかったのかもしれない。
話が逸れてしまったが、馬場と猪木はどちらが強いか・・・。
二人の間での感情のつながりを考えると、ギブアップでの決着は想像しにくい。
勝ちたい気持ちはあっても、徹底的に非情にはなれない関係だと思う。
微妙なタイミングでの、スリーカウントで決まりそうな気がする。限りなく2,9に近い、スリーカウント。
決まった後で、レフェリーにクレームを付けるパターン。
やはり私は猪木派だから、グロッキーで中腰になった馬場の後頭部に延髄切り、ということで宜しくお願い致します。


コメント